2013年02月26日

飛行機整備士が語る、スベらないお話 PartU

アルファーアビエィションのベテラン飛行機整備士がお教えするタイヤに関するとてもおもしろい知識、その続編をお届けします。
題して「飛行機整備士が語る、スベらないお話 PartU−受験シーズン真っ只中」。
しっかり勉強しましょう。

★前回のおさらい
自動車のタイヤの溝、トレッドパターンには、大きく分けると4つの基本パターンがあり、組み合わせて用途にあったタイヤが作られます。
F1レーシングカーのタイヤは接地面積を上げて滑らなくするため溝がなく、ツルツルのタイヤを使用しています。但し、雨天時は、溝のある雨天専用タイヤを使用します。
飛行機は大型旅客機も含めて縦方向に直線のみの簡単なトレッドパターンで、水を排出する機能は持っていません。その代わり、滑走路に溝を切り、雨天時の水の排出を行っています。

★それでは、お待たせしました。続きをどうぞ。

E.「飛行機のタイヤに溝は必要なの?」
その前に一般的タイヤの構造を確認いたしましょう。

タイヤ1.jpg

1.「ブレーカーコード」
接地面の強度を増し、異物の貫通を防止する。スチールワイヤーを編んでベルト状に構成されている。

2.「カーカスコード」
タイヤ構造を保持し、タイヤの骨格の役割を持つ。

3.「ビード」
タイヤ内周のホイールリム(4)に接する部分。
タイヤをホイールに固定し駆動力を伝えるとともに、空気が漏れないようにシールする。また内部にはビードワイヤーと呼ばれるスチール製のワイヤーを内包している。

4.「ホイールリム」
タイヤとこのホイールリムとの間に空気を保持する。

5.「トレッド」
主に路面に接する部分。表面にはグルーブと呼ばれる溝が彫られているのが一般的である。
トレッドに彫られた溝の模様は製品ごとに異なり、トレッドパターンと呼ばれる。グルーブには、トレッドと路面の間に入った水を排出してスリップを防止したり、操舵性や乗り心地を向上させるといった役割がある。

6.「サイドウォール」
タイヤの側面。メーカー名やサイズなどが表示されて(刻まれて)いる。
路面には接しないが、走行中は路面の凸凹に対応する為に、激しく屈伸している。
最も薄い部分であり、ここを傷付けると修理が効かず交換が必要となる。また、最も動く場所でもあり、乗り心地にも影響し、クラック(細かい亀裂)も入りやすいデリケートな場所でもある。

一般的構造を確認したところで、タイヤの溝の主目的、雨天時の水の排出機能は飛行機には必要がなく、操舵性や乗り心地向上もそれほど必要としていません。
F1タイヤと同じ溝無しタイヤを使用してもよいのですが問題がひとつ発生します。
F1タイヤは1レースまたは、途中でタイヤを交換して廃棄(または、リトレッド)されます。

飛行機のタイヤを毎回交換することはできません。
溝無しタイヤだと、見た目ではどのくらい摩耗したかが解らず、使用し続けるとタイヤの強度を司る、1のブレーカーコード、2のカーカスコードに傷を付けてしまう恐れがあります。
飛行機のタイヤは、着陸接地時の強度を最重要と考えて作られています。つまり、タイヤの強度を司るコード類 には絶対に傷を付けてはいけません。

タイヤ21.jpg

使用タイヤによって、溝の底から各コードまでの、距離は決まっています。
例えば、5のトレッド部にキズがある場合は表面からのキズの深さを測り、表面から溝までの距離を引いて、溝 底からのキズ深さが、コード類に達していないかを判断します。
タイヤの摩耗の目安としては、タイヤの溝で判断します。溝が少しでもあればタイヤの強度は保証できるので、使用上何の問題もありません。
極端に言うとツルツルになるまで使用してもかまわないのですが、溝がなくなると、それ以降、どのくらい摩耗したかが 解らないので、溝がなくなった時点で交換すべきです。

F.「 パイロットから、タイヤの溝が減って滑りやすいので交換してほしい、と言われたら!」
溝が無くなると、接地面積が増え、反対に滑り難くなり、タイヤの温度が上がり気味になります。
タイヤが滑りやすくなったからではなく、溝が無くなるとそれ以降のタイヤの摩耗量が解らず、使用中の強度が保証できなくなるので交換するのです。

「結論」…飛行機タイヤの溝は、タイヤの強度を保証するために必要です。


いかがでしたか、とても勉強になりますね。
アルファーアビエィションの航空豆知識、次回もお楽しみに。
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2013年02月14日

空港で働く車

アルファーアビエィションの飛行教官、整備士がお届けする毎回大好評の航空豆知識。
今回は「空港で働く車」です。空港を円滑に安全に運用するための車両をご紹介します。

写真左から
「トーイング・カー」…飛行機は基本的に前しか進めないので、バックをさせて誘導路まで移動させる車輌です。
「ハイリフト・ローダー」…コンテナの貨物を航空機の貨物室に積み降ろしをするための機械です。
「ベルト・トラック」…手荷物をベルトコンベアで積み降ろしします。
「タグカー・コンテナ」…コンテナに積み込んだ手荷物をコンテナごとに移動させる時に使用します。その後ハイリフト・ローダーで機内に積み込みます。

1.jpg

「消防車」…大型科学消防車です。化学薬品を、粉、泡、霧状にして消火します。
一般の火災のように水で消火するのではなく、科学薬品で空気を遮断して消火します。

2.jpg

「給油車(燃料補給車)」…航空機の燃料補給に活躍します。
大型機等の燃料はJETA−1(ケロシン:灯油系)を使用しています。
ちなみに、DA42もディーゼルエンジンですが、JETA−1を使用しており、1回に搭載できる燃料は760gal(約280リットル)です。

3.jpg

小型機は一般にAVGAS(ガソリン系)を使用しています。
福島空港ではこのAVGASの供給ができないため、アルファーアビエィションでは定期的に他から移送して訓練機に使用しているので問題ありません。

4.jpg

除雪車(ロータリー除雪車)」…雪や氷を取り除きます。
航空機が離着陸をするまでに、空港内、滑走路、誘導路、エプロンを除雪する必要があり、雪が多い場合は朝早くから働いています。

5.jpg

いかがでしたか。今度空港に行ったら、どんな車が働いているかぜひ探してみてください。
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2013年02月06日

給油時の注意

大好評、アルファーアビエィションの教官陣、整備陣がお届けする航空機の豆知識です。
今回はヘリコプター整備士が給油についてお教えします。しっかり勉強してください。

下妻、福島.jpg

給油時の注意と対策
寒く乾燥するこの時期、給油時にもっとも注意すべきものは「静電気」です。

湿度の高い夏などは、湿気を通して静電気が逃げていくので人体に帯電していくことはありません。(湿度が約75%以上だと静電気は逃げ、帯電しないといいます。)
その逆に、乾燥している冬は一年を通してもっとも静電気が発生しやすく帯電する時期です。
ドアノブなどに触ると「バチッ」と痛く不快な思いをされる方が多いと思います。
これは人体に帯電された静電気が外へ逃げようとする働きがあるため、電気を通しやすい物質(金属等)に触る際、静電気火花(スパーク)が発生します。
昼は見えにくくても、暗いところでは実際に火花が飛ぶのが見えます。

セルフのガソリンスタンドでは「静電気除去シートに必ず触ってから給油してください。」とアナウンスされてますが、これはスタンド内に気化したガソリンが充満しているので、スパークをした瞬間、爆発を起こす恐れがあるためです。
静電気除去シートは人体に帯電した静電気を抵抗の加減をしながら(一気に放電すると金属を触った時のようにスパークするため)地上へと静電気を逃がす仕組みになっています。

給油時の静電気は大事故に繋がる危険性があります。
そこで、給油時の静電気発生と蓄積防止策をご紹介します。

@給油ノズルのレバーは全開にしない。
液体が流動する時に発生する流体摩擦は、流速が大きいほど大きくなり静電気が帯電しやすくなります。
なるべく流速を小さく、流れを乱さず、振動を抑えることが大切です。

Aナイロン等、合成繊維の服は避ける。
合成繊維が静電気を起こしやすいのは有名ですが、それに加え冬は防寒の重ね着をするので、衣類と衣類が摩擦を起こし静電気が発生し帯電していきます。
ポリエステルでできているフリースも静電気が起きやすい素材です。
なるべく給油時は綿、絹、麻等の静電気を発生しづらい天然繊維の衣類がお勧めです。
アルファーアビエィションの整備課では天然繊維でできた防寒着を着て給油作業を行っています。

B燃料をこぼさないようにする。
液体の状態より、こぼれて気化した方が引火しやすいため注意が必要です。
エンジンカットした後の機体への給油では、エンジン付近が高温になっているため地面にこぼし気化すると危険です。気をつけて給油することが大切です。

Cアース(地面などに帯電を逃がす)をしっかりとる。
給油時は@で述べたように流速を小さくしていくことで流体摩擦も小さくすることができますが帯電はしていきます。
しかしアースをとることで帯電せずに地面へと放電していくので安全に給油ができます。
当社でもアース線はテスターを用いて導通確認や抵抗値を測るなど、日々点検を行っています。
アース線は抵抗値が低いものがよいです。これは一気に放電するとスパークする恐れがあるためです。
ヘリコプターや飛行機へ給油するときは「必ずアースをとる!」 これはとても大事です!!
自動車に給油するときも静電気除去シートに触り、給油ノズルを給油口に触れて給油します。

Aについては合成繊維の衣類がとても多いので、給油時だけ天然繊維の衣類へ着替えるのは大変だと思います。
@、B、Cを行うと安全性が格段に高まるので、覚えておいてぜひ実施してください。
以上、給油時の注意と対策をお届けしました。
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